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Column

《 2018.7.2 》
= 2018年度 介護報酬改定 =

生活援助が多いケアプランの届け出、地域ケア会議は本当に機能するのか?


2018年4月、3年ぶりとなる介護報酬の改定が施行された。
 
日本介護クラフトユニオン(NCCU)は、本年1月26日に介護報酬改定案が答申されてから、随時組合員に向けての勉強会を開催するとともに、居宅介護支援についてのアンケートを行った。回答いただいた調査結果とともに、介護現場のケアマネの声を3回に分けて紹介していきたい。

第3回目は、「訪問回数の多い利用者への対応」である。
 
「利用者の自立支援・重度化防止に資する質の高い介護サービスの実現」の観点から、訪問介護(生活援助中心型)については、要介護度別に利用回数の上限が設定された。厚生労働省が設定した1ヵ月あたりの基準回数を超えるケアプランについては市町村に届け出ることとし、そのプランは地域ケア会議で検証される(本年10月から施行)。
 

 認知症や独居の高齢者はどうなる?

 

日本介護クラフトユニオン(NCCU)では、本年4月に実施した「2018年度介護報酬改定(居宅介護支援)についてのアンケート」において、上記事項について現場の組合員はどのように考えるかを調査した。その結果、当事者であるケアマネジャーは「反対」という声が「賛成」の声を上回った。
 
ケアマネジャーが最も不安を抱いているのは、「認知症や独居の高齢者がどうなるのか」ということであった。生活援助は、利用者、特に認知症や独居(日中独居も含む)の高齢者にとって、在宅生活を送る上では重要なサービスである。
 
「独居、老老介護世帯が増えている現状。近くに家族がいても、事情があり介護協力が望めない場合が多い」「本人や家族の理想どおり生活援助を組み入れていては、人手不足や介護報酬の面から厳しいことも理解できる。しかし、認知症の方で独居の場合は特例を考慮して欲しいと思う」「利用回数の上限が決められることにより、介護員の負担は軽減されるかもしれないがその分家族の負担は多くなるのではないか。また金銭面の負担はどうなるのか」
 
こうした声が寄せられた。国が、成長戦略「新3本の矢」として推し進めている「介護離職ゼロ」。本当に実現できるのか、今一度立ち止まって考えていただきたい。
 

 問われるケアマネの力

 

また、この改定によって懸念されるのは、ケアマネジャーが自主規制して生活援助の利用回数を抑えてしまうことだ。しかし、それによってADLが低下し在宅生活が困難になってしまうのは本末転倒である。
 
厚生労働省のデータでは、生活援助利用回数が月90回以上の利用者48件に対し、保険者が「適切ではない」と判断したケースは2件のみであった。利用者にとって、生活援助が在宅生活を送る上で必要なのであれば、設定された回数を超えても認められるということである。
 
「自治体が、プランの本質を理解せず生活援助カットありきで臨まれると問題であるが、専門職としてやるべきことをしっかりやって、説明できるのであれば是正を促されることはない。御用聞きケアマネにとってはつらいと思う」というケアマネジャーの声もある。今後は、今以上にケアマネジャーのアセスメント技術、分析力が問われることになるのは間違いない。
 

 包括にかかる負担は精査されないまま

 

「地域ケア会議に対する不信感」。アンケートから浮かび上がってきた、ケアマネジャーが日常的に抱いている自治体への訴えは、予想を超えるものであった。
 
「すべてのケースにおいて地域ケア会議ができるのか疑問」「利用者のことを書面でしかわからない集まりの地域ケア会議で何を検討するのか。ケアマネは行政と利用者との板挟みで、今から気が重い」「地域ケア会議にかけて解決しない事例もたくさんある。担当ケアマネジャーが方法を考えて利用者や家族に提案した結果、生活援助を導入しているという場合が多いのではないか」「本当に必要なサービスの利用を抑制されるキッカケにならないか疑問視しているし、保険者機能が適正に働かなかった場合、利用者が不利益を被ることにならないか」などである。
 
地域ケア会議は、2018年4月からすべての自治体において実施されている。そして、地域ケア会議の主な設置主体である地域包括支援センターについては、「地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律」により、2018年4月から「機能強化」が謳われているところである。
 
この改正法を制定するにあたり議論の場となったのが、2016年度の介護保険部会である。会議の中で、地域包括支援センターについては、「業務負担が過大となっている」という問題提起とともに、課題として「職員の力量不足」や「業務量に対する職員数の不足」が挙げられていたが、精査もされないままに新たな業務が課されることとなった。
 
そのような状態の中、果たして地域ケア会議は適切に運営されるのだろうか。現在でも、自治体ごとに会議の開催頻度や中身の濃淡があることは否めない中、新たな業務として加わる「頻回な生活援助を位置付けたケアプランの検証」について、地域格差が生じる可能性は大きい。ケアマネジャー、そして利用者や家族は、納得できる検証結果となるのだろうか。また、早急な判断が必要な場合は随時会議の招集が必要となる。その場合、会議へ参加する多職種の専門職の日程調整など、いかに滞りなく行えるか、自治体としても早急な対応策の検討が必要となるであろう。
 
今回の改定内容は、ケアマネジャーのみならず、介護保険の被保険者である利用者、そしてその家族にまで大きな影響を与えるものである。もう少し丁寧な議論と慎重な対応がなされるべきだった、と考えざるを得ない。
 

 介護離職ゼロ、本当にやる気ある?

 

また、財務省の財政制度分科会(2018年4月11日開催)では、今後の社会保障改革の方向性として「居宅介護支援に利用者負担を設ける必要」「要介護1、2の生活援助サービスの更なる地域支援事業への移行も進めていく必要」が提案されている。冒頭にも書いたが、生活援助は利用者が在宅生活を送る上で、重要なサービスである。介護サービスを必要とする人が、必要なサービスを受けることができない介護保険制度となってしまう時が来るのだろうか。
 
国は、「介護離職ゼロ」を本当に実現させようと考えているのか、甚だ疑問である。

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