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Interview

《 2018.6.29 》
= シーディーアイ社長 岡本茂雄 =

自立の意欲は将来予測で引き出す! AIと目指すケアマネジメントの次のステージ


《 シーディーアイ 岡本社長 》

ケアプランの作成を支援する人工知能「MAIA」を開発しているベンチャー、シーディーアイ。現場のケアマネジャーの協力も得て、その精度や使い勝手を高めていく取り組みを着々と進めている。昨年度から始めた愛知県豊橋市での実証研究は2年目に突入。茨城県でもこの夏から新たに試行事業をスタートさせる。
 
いったいどんな価値を生み出そうというのか? AIはケアマネジメントをどこへ導いていくのか? 代表取締役社長の岡本茂雄氏は、「介護革新」「ケアマネジメントの次のステージ」といった意欲的なゴールを掲げている。東京の中央区にあるオフィスを訪ね、描くビジョンを詳しく語ってもらった。(聞き手・編集:Joint編集部 青木太志)
 

「ケアマネジメントの進化に貢献する」

 

  −−「MAIA」の開発は順調ですか?
 
今のところ概ね順調にきていると思っています。既に一定の知識や経験のあるケアマネさんなら仕事で使えるツールに育ちました。会社の立ち上げからこれまで色々なことがありましたが、愛知県豊橋市や茨城県など自治体とうまく連携できたことも大きかったですね。現場のケアマネさんに実際に使って頂きながら、ともに課題や改善策を見出していくという作業を早い段階で始められました。AIのエンジニアだけ、あるいは医療・介護の専門職だけでは、やっぱり本当のイノベーションって起こしづらいですからね。
 
  −−「MAIA」を一般向けに商用化する時期は?
 
ずっと進化し続けていくこともAIの特徴の1つです。80点のところで出すべきか、100点のところで出すべきか、それとも120点のところで出すべきか。これがなかなか難しい判断になりますが、今のところ今秋にもスタートできればと考えています。
 
  −− ケアマネジメントにAIを用いて創造したい価値は?
 
介護革命、介護革新。そんなことを夢見てきました。やっぱりケアマネジメントってものすごい広範な知見が必要ですよね。要はその人の自立を支えるわけですが、利用者は十人十色で非常に多くの要素を考慮しなければいけません。だからこそ、相対性理論のようにシンプルな1つの式にまとめることはできないでしょう。とにかく非常に難しいんです。ただ私は、ケアマネジメントのコア技術を見出して磨き上げていくことは可能だと考えてきました。AIは膨大な知見を学び、それを整理することに長けています。うまく使えば新たな局面が開けるでしょう。「介護学の発展に貢献する」と言うと少し大袈裟かもしれませんが、ケアマネジメントの進化に寄与すると考えています。もちろん、日々の煩雑な事務作業の効率化にも貢献していきますよ。
 

「自立を考えることは、未来を前向きに見つめること」

《 シーディーアイ 岡本社長 》

  −− あなたにとって「MAIA」とは?
 
もう我が子のような存在ですね。とても愛しています。ですからあまり悪い面は言わず、良いことばかり語ってしまうかもしれません(笑)。
 
  −−「MAIA」の特徴は?
 
利用者の状態を入力すると、サービスの種類や頻度、組み合わせを最大で3パターン提案します。ただここでは、膨大なデータを基にその人の将来像を予測する機能を紹介させて頂きたい。このサービスを続けていけば1年後にはオムツを外せる、トイレまで歩いて行けるようになる −− 。そんなイメージです。介護の大変さって、今の状態がいつまで続くのか分からないところにもあるのではないでしょうか。家族の方もかなり苦労されますから、その負担を軽減するために本人の自立よりレスパイトを優先させるケースだって少なくないですよね。もし未来がある程度の精度で予測できるとしたらどうですか? 本人や家族の発想を前向きに変えていけるケースが増えると思いませんか?
 
  −− 少し変わるかもしれませんね。
 
正確な将来予測が自立のモチベーションを引き出すカギになる −− 。そうした仮説も持って我々は「MAIA」を育ててきました。改めて言うまでもないことですが、ケアマネジメントは既に非常に優れた手法です。世界に誇る日本の発明品で、これまで関わってきた方々の努力の賜物です。ただ現状をみると、利用者がもう一度元気になれる可能性を見出してその方向へ導いていくという機能が、必ずしも十分に発揮されていません。今後は自立という要素の重要性が一段と増します。自立を考えることとはつまり、未来を前向きに見つめることではないでしょうか。まずは未来を予測して提示し、本人や家族にどんな未来がいいのか選択してもらう。それを関係者間で合意・共有し、目指すべき未来へみんなで一緒に向かっていく。そうした次世代の業務フロー、次世代のケアマネジメントの形も今後はあっていいのではないでしょうか。
 

「AIの予測に聞く耳を持つ人もいる」

 

  −− ケアマネはすぐ不要になる、という警戒感を持っている人もいますが?
 
当面の間はあり得ません。我々の「MAIA」はあくまでもケアマネさんに使われるもの。高齢者が目指す生活の実現をサポートしてくれるツールだと思ってください。ケアマネさんの秘書や後輩のような存在になると思っています。しっかりと育成していく気持ちがあれば、仕事をしながらともに成長していけるのではないでしょうか。秘書や後輩に仕事を丸投げして自分は何もしない、なんて上司は許されませんよね。ただ20年後は分かりません。その時どんな社会になっているか、今から予測するのは難しいですよね。
 
  −− 自治体での実証研究では、必ずしもポジティブでない反応をしたケアマネもいたようですが?
 
そうですね。実際に試したケアマネさん全員が高く評価してくれたわけではありません。今の「MAIA」は書類づくりをサポートする機能がありませんので、「事務作業が楽になるわけじゃないのか…」とがっかりされた方がおられたようです。「本当に信用できるのか」という声も聞かれました。一方で、新しいテクノロジを積極的に取り入れて有効に活かすノウハウを見つけていこう、という前向きな姿勢の方も少なくないんですよ。ケアマネジメントをもっと良くしよう、アップグレードしようという理念に共感してくださる方もいました。家族との相談やサービス担当者会議などのシーンで実際に未来予測を用い、合意の形成に役立てるというケースもあったんです。AIが多くのデータに基づいて予測した結果です、と言うと聞く耳を持つ方がいることも分かりました。
 

「挑戦を後押しする土壌が大切」

《 シーディーアイ 岡本社長 》

  −− 収集しているデータは十分なのでしょうか?
 
そうですね。確かにどんなデータを与えるかは非常に大事です。全ての高齢者が加入する先進的な介護保険制度が設けられていることもあり、日本は諸外国と比較してデータの整備が進んでいるんですよ。既存のデータを解釈するだけでも、非常に良い成果が得られるはずだと考えています。
 
  −− 今は要介護認定とレセプトのデータのみを与えているようですが、本当にそれで十分なのでしょうか?
 
もちろん今後さらにデータを充実させていかなければいけません。そこは極めて重要ですから力を入れています。完成された性能を持ち広く信頼されるAIを作れるのか、あるいは挫折してしまうのか。それが我々のチャレンジです。「必ずできる」という確信を持ったから始めたわけではありません。できるかどうか分からないからこそ挑戦しているんです。思い切った挑戦を後押しする土壌って大切ではないでしょうか。日本は既にある程度のデータが揃っています。そうした土壌を培っていけば、この分野で世界のトップに立つことさえできると思います。
 

「我々が必ず勝つ」

 

  −− 多くの企業がAIの活用を模索していますが、御社のライバルの動きをどうみていますか?
 
AIは知能ですから色々な領域に使われます。我々もAIを開発しているわけですが、何より重要なのはAIを使うべき領域を開発しているということです。AIに何を考えさせれば真に有益なのか? これから違う領域に取り組むところも出てくるでしょう。我々が単独でできることには限界がありますから、うまく連携できればそれが一番いいですね。
 
  −− 同じ領域を開発するところも出てくるのでは?
 
確かにキレイ事ばかり言っていても仕方ないですよね。もし真似するところが現れても我々が必ず勝ちます。「MAIA」は1年前から学び続けてきました。今も実際に動かしながら改良を続けています。現場についての知識や経験、ノウハウも非常に重要ですから、弊社は医療・介護の専門職も積極的に採用してきました。いわゆる「現場感覚」でも先行しているんです。ライバルは大歓迎ですが、現時点で我々が有利な立場にいることは揺らぎません。今後はもっとアクセルを強く踏み込んで前進していきます。
 

「育ててやるか、という気持ちで」

 

  −− 全国のケアマネに広く呼びかけたいことは?
 
ケアマネさんってかなり高度な職責を求められていますよね。明確なゴールがあるわけでもないですし、自立にも様々な切り口があります。高齢者にとって特に大事なことは、生き方や生き様、価値観、死生観、生きがい、尊厳、ライフスタイルでしょう。それを汲み取り、本人ですらまだ気づいていないニーズを丁寧に掘り起こし、ケアプランにきめ細かく反映させていく。本人や家族に寄り添い、他の関係者と良いチームを組んで目指す方向へ向かっていく。それはケアマネさんにしかできない仕事です。AIを使えばより優れた成果を出せる可能性があります。もっと自立にウェートを置いた新しいケアマネジメントが実践できるかもしれません。かなり優秀な秘書になりますよ。ケアマネジメントの進化のために育ててやるか、という気持ちを向けて頂けると幸いです。

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