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Column

《 2018.6.4 》
= 2018年度 介護報酬改定 =

【居宅介護支援】管理者の主任ケアマネ限定、猶予期間は6年にしたらどうでしょう?


2018年4月、3年ぶりとなる介護報酬の改定が施行された。
 
日本介護クラフトユニオン(NCCU)は、本年1月26日に介護報酬改定案が答申されてから、随時組合員に向けての勉強会を開催するとともに、居宅介護支援についてのアンケートを行った。回答いただいた調査結果とともに、介護現場のケアマネの声を3回に分けて紹介していきたい。

第2回目は、「居宅介護支援事業所における管理者要件の見直し」についてである。
 
遡ること2016年12月9日、社会保障審議会・介護保険部会での「介護保険制度の見直しに関する意見」の中で、「適切なケアマネジメントを推進するため、居宅介護支援事業所における管理者の役割の明確化・・・を平成30年度介護報酬改定の際にあわせて検討することとするのが適当」と整理された。
 
上記意見を受け、今改定では、事業所における業務管理や人材育成の取り組みを促進させることで各事業所のケアプラン、ケアマネジメントの質を高める観点から、居宅介護支援事業所における管理者は主任ケアマネジャーであることが要件とされた。主任ケアマネジャーの研修カリキュラムの中に、人材育成や指導、業務管理などが含まれているため、管理者としては適任である、ということだ。
 

 マネジメント力が身につくのか?

 

社会保障審議会・介護給付費分科会でこの議論がなされていた2017年12月、日本介護クラフトユニオン(NCCU)では「主任ケアマネジャーを居宅介護支援事業所の管理者要件にすることについてどう思うか」という緊急アンケートを実施した(回答者413名)。その結果、最も多かったのが「主任ケアマネジャーの研修内容と管理者は別なので反対」(50.0%)という回答であった(複数回答)。
 
主任ケアマネジャーの研修内容に、「人材育成及び業務管理」の科目がある。しかし、わずか3時間の講義だけで、後進の育成や事業所を適切に管理できるノウハウが身につくのだろうか。また、この資格は70時間のカリキュラムを修了すれば取得できる。研修の中では面接もないので、その人の人間性や資質的なものはわからない。管理者として適任であるか否かの判断材料もない中で、事業所運営を迫られるわけである。
 
「スキルがないのに資格だけ持っている主任ケアマネが多くいる。研修を受けたからといって優れているとは思えない」「主任ケアマネと管理者では役割が別と思われるので、管理者の要件が主任ケアマネだけになるのは賛成できない」「ケアマネに求められるスキルと管理者に求められるスキルは必ずしも一致しない。すべての主任ケアマネが人材育成に優れているとは、とても思えない」。
 
現場では、主任ケアマネジャーの資格を持っているからといって管理者とすることに、異を唱える声が少なくない。
 
管理者に欠かすことのできないスキル、それはマネジメント能力であり、事業者としては当然に管理者に対して求めるものである。主任ケアマネジャーを管理者要件にするのであれば、マネジメント能力を育成するための研修の実施、そして居宅介護支援事業所の管理者としての能力評価基準を整備し、機能不全に陥らないように手立てを考えていく必要がある。
 

 研修費の負担、介護報酬でも考慮を

 

アンケートの回答で次に多かったのが、「主任ケアマネジャーを取得するための費用を法人が出してくれるのなら賛成」(47.5%)であった。
 
現在、主任ケアマネジャー研修の法定研修受講料は平均約4万3000円(1万7000円〜6万円)、更新研修受講料は平均約3万4000円(1万5900円〜5万9000円)となっており、受講生にとってはかなりの負担となっていることは間違いない。
 
現場からは、「主任ケアマネは研修にかかる時間と費用の負担が大きすぎる」という不満や「主任ケアマネの研修費が高額であり資格更新も必要になるため、個人的な負担が大きくなり、さらに離職者が増えるのではないか」という不安の声も上がっている。
 
研修費用に関しては、個人の資格であるため各々が自己負担で受講している場合が多い。NCCUにおいても、労使関係のある法人の約7割が、研修費用は全額自己負担としており、その結果が上記のような声となって表れているわけである。
 
厚生労働省は都道府県に対して、「介護支援専門員関連の法定研修については、地域医療介護総合確保基金において経費を補填することで受講者の負担軽減につなげるメニューの積極的活用」を推進している(3月6日全国介護保険・高齢者保健福祉担当課長会議)。
 
今改定によって、主任ケアマネジャーは事業継続のために必要な資格となった。「今後、制度上必要な資格になるのに、費用も自己負担なのか」。現場の声はもっともである。国、そして自治体からの補助はあってしかるべきだが、その資格を使用して事業を行う法人にも、資格が取りやすい環境整備を推進し、研修費用についても何らかの対応を図ることを求めたい。おのずと、居宅介護支援の報酬についても考慮されるべきだろう。
 

 介護難民を増やさない、高齢者の安心のために

 

さて、主任ケアマネジャーの管理者要件だが、2021年3月31日までを経過措置期間とし、その間に要件が満たされなければ指定取り消し、という事業者にとっては厳しい見直しとなった。
 
現在の主任ケアマネジャーは2万8463名、全居宅介護支援事業所(3万9866事業所)に配置するためには不足数が1万1403名となっており(2016年度厚生労働省調査)、厚生労働省は今後3年あれば必要数を確保できるとしている。
 
しかし、「新人もいるので3年は間に合わない」「3年の猶予が短い」、このような声が現場からは聞こえてくる。また、主任ケアマネジャー研修の開催日数、受講者の定員など、受講したくてもできない現状もある。3年後に主任ケアマネジャーの資格が取得できない、ということはもちろん想定され、そうなれば事業所は閉鎖や統廃合されることになる。その場合、担当していた利用者はどうなってしまうのか、介護難民を増やすことにならないだろうか。ケアマネジャーの資質向上を図る一方で、新たな懸念が浮上してきた。
 
厚生労働省は、「研修開催日程や開催期間、定員等の設定に当たって、選択的な受講が可能となるよう各講義を個別開催とする等、受講しやすくする工夫」を都道府県に対してお願いしている(3月6日全国介護保険・高齢者保健福祉担当課長会議)。しかし、現状を考慮すると、現在稼働している全居宅介護支援事業所を存続させるためには、最低でも6年は猶予期間が必要となる。地域包括ケアシステムを深化・推進していくということであれば、再度見直しを図るべきではないだろうか。
 
NCCUは、2017年就業意識実態調査で、事業所運営に関わっていない方(管理者以外の方)に「目指している職位はあるか」という設問をした。ケアマネジャー234名のうち88.9%は「ない」と回答。その理由は「このままでよい(44.7%)」「仕事量が多い(34.1%)」「責任が重い(30.3%)」が上位となった。「現在の仕事に対してかなり満足感がある。管理者になると仕事量が増え、責任も重くなるから今のままでよい」と考える方が多い現状で、果たして厚生労働省の計算どおり主任ケアマネジャーは確保できるのであろうか。そして3年後、利用者は安心して介護サービスを受けていられるのであろうか。
 
「主任ケアマネの取得や、更新をしない人が増える可能性がある」。現場の声が現実となり、ケアプランを作成してもらえないがゆえに介護サービスを利用できなくなる高齢者が増えることのないよう、今後は国、行政、事業者が三位一体となって強力に取り組んでいく必要がある。

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