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Report

《 2018.5.9 》

ケアプランAIの現在地 実証研究の報告会で語られた当面の課題と将来性


《 シーディーアイ岡本社長(左)、佐原豊橋市長(右)8日 》

「生まれたのは昨年。まだ1歳にも満たない。これからどう成長させていくべきか、皆さんと一緒に考えながら大きく育てていきたい」。岡本茂雄社長は壇上でそう語った。決して少なくない課題が浮き彫りになった一方で、そのポテンシャル、将来性を改めて確認することができたと前を見つめる。
 
ケアプランの作成を支援する人工知能「MAIA(マイア)」を開発しているベンチャー、シーディーアイ(東京都中央区)−− 。愛知県豊橋市と共同で進めてきた実証プロジェクトについて、8日に豊橋市役所で成果報告会を開催した。
 
居宅介護支援の事業所や地域包括支援センターで働く33人のケアマネジャーが実際にMAIAを使用。どう感じたか、業務がどう変わったかをアンケートやヒアリングなどで調べた。
 

「まだ0歳のプロトタイプ」

 

「あまり役に立たなかった」。アンケートでは14人がそう答えた。「役に立った」「どちらかというと役に立った」は合わせて16人。評価が分かれている。
 
「作成すべき書類を減らすなど事務を効率化する機能がまだない。そのことで『期待外れ』と感じた人が多かった」。シーディーアイの担当者はそう振り返る。情報の入力作業などが新たに必要となるため、むしろ手間が増えてしまうと捉える人もいた。MAIAと連動するスマートで使いやすい業務支援ツールを用意し、ケアマネが仕事の流れに無理なく組み込めるようにしていく −− 。それを普及に向けた重要なポイントと位置付けた。
 
最大の課題は今の限界を超えていくこと、広くケアマネの信頼を勝ち取っていくことだ。

《 8日の成果報告会 》

MAIAが学習しているのは、要介護認定のプロセスで得られる情報とレセプトのデータ。利用者の状態をブラウザで入力(認定調査項目を踏襲)すると、サービスの種類、頻度、組み合わせが最大で3パターン提案される。そのプランを採用すると1年後に状態がどう変化しているか、という将来予測も合わせて示される。
 
ただし今のところ、プランの良し悪しを判断する基準は要介護度が改善するか否かのみ。「通所:週2回」「ショート:月1回」などと助言するだけで、肝心の「どの事業所で何をすべきか」は答えられない。収集できるデータに限りがあるためで、将来予測の精度の検証もまだまだ不十分だ。実証プロジェクトではケアマネから、「本当に大丈夫なのか?」といった不安の声も聞かれたという。シーディーアイも「まだ0歳のプロトタイプ(岡本社長)」と認める。今後、性能の向上に一段と力を入れていく方針だ。
 

 長所や限界の見極めがカギ

 

ケアマネとMAIAによる「ハイブリッド型ケアマネジメント」の確立 −− 。シーディーアイが描くビジョンだ。
 
AIが得意なのは、過去の膨大なデータを基に「どうすれば心身機能の状態を改善できるか?」を考え出すこと。そうした能力は急速に高まっていくとみられるが、ケアマネの役割は小さくならない(少なくとも当面は)。利用者の思いや家族のニーズ、暮らす環境、経済状況、インフォーマルケアの資源などを総合的に勘案し、現実的で利用者本位の最適なプランを作ることが引き続き求められる。医療サイドとの密な連携なども欠かせず、ペーパーワークが直ちに半減するわけでもない。ケアマネとAIが相互に弱点を補い合う −− 。それが「ハイブリッド型ケアマネジメント」の意味合いだ。AIをうまく使いこなすには、その時点の能力や長所、限界を正確に見極める目が非常に重要となる。AIは日進月歩で守備範囲を広げていくため、その進化を継続的にフォローしていかなければいけない。
 
今回の実証プロジェクトでは、前向きなリアクションをみせたケアマネもいた。「将来予測の提示によって説明力が上がる」「プランの幅が広がる」「新たな視点を得られる」「客観的なデータを出せるので信頼を得やすい」。ヒアリングではそんなポジティブな意見が出たという。シーディーアイの担当者は、「利用者・家族との合意形成、サービス担当者会議でのコミュニケーションなどにも活用できる。プランに自信を持てるようになる人もいる」と強調。将来予測や自立支援といったメイン機能を成熟させ、業務支援ツールなどのサポート機能を充実・強化していくことにより、多くのケアマネが重宝するソリューションになると睨んでいる。
 

 事業化、秋にもスタート

 

シーディーアイは豊橋市との実証プロジェクトを今年度も続ける。今月にも事業所の募集を開始し、7月から来年3月にかけて60名のケアマネにMAIAを使ってもらう計画だ。セントケア・ホールディングやツクイなど、出資を受けた企業が運営する事業所でも試験導入を始めた。全国15法人、38事業所で働く104人のケアマネに活用させ、性能アップの加速につなげていく考えだ。
 
広く一般のケアマネも対象とする事業化は今秋にも始める予定。岡本社長はこの日の報告会で、「人口知能は教育していくもの。現場の皆様に厳しくしごいてもらってこそ賢くなっていく。今はまだ未熟だが、未来の人類に大いに貢献する存在を優しく育てる気持ちで接して頂ければありがたい」と呼びかけた。

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